2016年 01月 29日
溝掘り その参 安全な排水
その水を排水口に流すのですが、安全に排水する必要があります。
安全な排水とは等速で、土壌を削らない排水のことです。
植木地区の田んぼの排水口の様子です。
また後でいいやと、横溝だけを掘り、点穴を掘っていなかったためか
角度をつけすぎていたか、
すごい勢いで水が写真右側から排水口へと流れ込んでいました。
幸い流れ込む水は泥水ではなく、透き通っていたため
見た目ほど削ってはいないように思われます。
それでも流れを緩めようとこのように、水を意図的に
蛇行させることも必要です。
ただ、矢野さんが言われていたように、「自然界は相対的に動いている」ため
ここの流れを緩めることで、別の場所に力が働きます。
初めの画像になりますが、水の動きを人為的に操作すると
左上の高い部分から水があふれてきました。
すると、今まで水の動きが無かったために、この部分が
ある程度ポロポロと崩れながら、泥混じりの水が流れ始めます。
そして、しばらくすると水の勢いに応じて落ち着きます。
こちらは大畑地区の田んぼの排水口の様子です。
前回掘った溝も機能しているようで、田に溜まっている水の量のわりに
等速で安定した水量が流れ込んでいる印象です。
この透き通っている水も、元をたどればこのように濁った水が
溝に滞留しています。
その水も各所に点穴を掘ることで、点穴による地形落差を通過するたび流れが
緩み、浮遊していた泥も沈下し、排水口にたどり着く頃には
すっかり透き通った水へと変わり、この先川へと流れ込みます。
さて、一方で横溝だけで、点穴のない溝ではどうかというと、
この泥水がそのまま排水口へと流れ込むことになります。
こちらはすぐ下の田の排水口の様子です。
この田の持ち主は丁寧に溝を掘り、側面も固めてきれいな溝を掘られていました。
しかし、どういうわけか溝に溜まった水は、溝の入り口の水の濁りと
全く同じ状態で排水口へと流れ込んでいます。
このように、泥が浮遊していて、溝の深さ分いっぱいの水が勢いよく
排水口から川へと流れ込んでいます。
この光景は田んぼだけではなく、山に走る道路沿いにも見ることができます。
いわゆるコンクリートのU字側溝です。
道路に沿ってカーブは付けられているものの、側も底も平らであるため
水の流れは斜面に沿い加速度的に増します。
上の田と同じように、溜まった水は全て川に流す発想のもと、
設置されるのです。このように直線に配されたコンクリート溝では
その流れを緩めるすべはありません。
片側が平面でない部分は、その地形に沿って空気が流れることで
石や岩が引っかかり、そこに落ち葉などが堆積することで、
流れを蛇行させる働きを自然界は行ってくれます。
田に掘られる溝は、田にたまった余分な水を流すための役割
だけでなく、地下への浸透を促す役割を備えています。
また、植物を育てる土壌を削らず、安全に排水する必要があります。
ただ水を流せばいいという視点で、山や田に降った雨を
急速に一本の川に集めるために、川の水量はまたたくまに
かさを増すのではないでしょうか。
山に降る雨は山を、田に降る雨は田を潤してくれます。
その恵みを最大限にいかすため、溝掘り一つとっても
気を配る必要があるのです。
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