僕が自家採種をする目的は、朝日という栽培適地が県南部である稲を、北房の地で育つ晩生品種「北房朝日」にするため。
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自家採種とは、その年に取れた作物から種を採ること。
今年の朝日は自家採種を始めて三年目になるので、この北房の地で三回世代交代をしたことになる。
この地に馴染んできたかと聞かれれば、まだまだだと思う。
そして、この先何年繰り返せば馴染んだと言えるようになるのか分からないし、そもそも馴染むのかも分からない。
朝日という稲は、そもそも岡山県南部が栽培適地のため、中北部の北房地域では育たないとされていた。
だから、一年ごとに種を買うことを止めて、種取りをすることに決めた。
自然栽培農家の先輩たちの多くは、この方法を取っている。
その目的は種の肥毒を抜くことにある。
僕もそのことを考えないわけではないけど、それよりも種取りを繰り返すことで、本来育たないとされていた地域に稲は適応するのかを見定めたい、という思いのほうが強い。
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朝日というお米は、実に奥ゆかしい味わいのあるご飯になる。
はっきりした甘さは無く、粘りは控えめで、今の人気のあるお米とは正反対の食味かもしれない。
しかし、よく噛むことで奥にある甘さを感じれるし、口のなかでさらりとほどける程度の粘りはおかずの味を引き立ててくれる。
青米がまだまだ多い今の段階でその程度の食味なので、これがしっかり登熟するようになればどんな味わいになるのか、とても楽しみでしかない。
今年度の米作り開始間近です。