2018年 05月 31日
自然栽培を続けていくと草は生えなくなるのか #565
自然栽培を続けていると、土が出来て草が生えなくなる、ということを聞いたことがある人は少なからずいると思います。
五年間、稲を自然栽培してきてそんなことは無いということを感じています。
※自然栽培とは、肥料と農薬に頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農業のことです。
ここでいう肥料は、化学肥料、堆肥(動物性・植物性問わず)など外部から人為的に養分供給を目的に施されるもの。農薬は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤など。
自然栽培を続けていると草が生えなくなる?
ある自然栽培農家が、冒頭のようなタイトルで記事を書いていたので、僕も自身の経験から得たことを書きたくなりました。
自然栽培農家の中には田んぼに草を全く生やさずに稲を育てている人たちがいます。極少数ですが、その方々は田んぼに除草に入らなくても済むそうです。
僕はどうしてそんなことが起こるのか疑問でした。
自然栽培という栽培方法を本などで調べ始めた当初、「土が出来てくると草が生えにくくなってくる」「自然栽培を続けるうちに草は生えなくなってくる」といったことを目にしたことがあります。
実は一年目は、今のように一ヶ月のうちに四回も五回も除草機をかけずとも済んだ経験があります。
これまで五年間畑として使われていた田んぼに水を張り、田んぼに戻した初年度のことです。
試しに草抜き用に自作したチェーンを引っ張ったところ、何の効果も感じませんでした。
稲刈りをする時分まで結局草はほとんど生えてこなかったのでした。
いわゆる、田畑輪換を利用した結果です。
ただ、それ以降はこれでもかというぐらい草は毎年生えてきます。
いくら畑の期間が長かろうと、草の種子は生き残り、かつ水田に戻った途端に増えていくのです。
草はなぜ生えるのか
草はなぜ生えるのでしょうか。
それは、種があるからです。
必要な所に必要な草が生える、とも言われていて、確かにそういうことがあるのだとも思いますが、理由はもっと単純で草が生える理由はそこにその草の種があるからです。
種が発芽するための条件が整えば、種は発芽します。
昨年、二回代掻きを行いました。
目的は草抜きのためです。
流れはこうです。
まず、田植えの一ヶ月前に田を起こし、10日間ほど乾かします。
その後水を張り、一回目の代掻きを行います。
20日間水を張りっぱなしにしておくと、草がわんさか生えてきます。
特にコナギが地面を覆いつくすほど生えてきます。コナギという草は、水中で、かつ酸素が無い条件下で発芽するという性質があります。
その性質を利用して、田植え後に発芽するはずだった種を発芽させます。
そして、田植え2日前に二回目の代掻きを深めの水で行います。
すると、コナギは水に浮かぶので、熊手などで畦にすくい上げ、初期の除草が完了というわけです。
じゃあ、その後は除草に入らずに済んだのかというと、全然そんなことはありません。
その後も、わんさか生えてくるのです。
初めの代掻き除草なと無かったかのように。
考えてみれば、草の種は無数に田んぼに落ちているので当然といえば当然です。
除草機をかけると、種から芽を出したばかりの草がもう本当にブワーっと浮いてくるのです。
この田んぼでは、6月から7月にかけて、一週間ごとに計五回除草に入り、なおかつ最終的に手で抜き、ほぼ全てのコナギを抜ききりました。
そこまでやって「自然栽培を続けていると草は生えなくなる」という言葉の意味が少し分かった気がしたのです。
もしかして、このような管理を十年くらい続ければ草の種が無くなるんじゃないか?と感じたのです。
つまり、「種が無くなるほど草を抜きまくれば、草は生えなくなる」という至極単純明快な答えに気づいた瞬間でした。
草を生やさない管理を続ける
冒頭に書いた、除草に全く入らずに稲を育てる自然栽培農家は、もしかしたらそんな管理をずっと続けてこられたのかもしれません。
だとすれば、本当にすごいのは草が生えてこない事実よりも、その管理を続けていること、だと思います。
「自然栽培をしていれば草は生えなくなる」のではなく、「種を残さずひたすら草を抜きまくったから草が生えなくなった」のです。
草の生えない田んぼは、一部の天才だけが可能な技術ではないのです。
毎年毎年草を抜き、翌年に種を落とさないという継続がなしえる日々の積み重ねなのです。
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