2019年 05月 18日
浅水代掻きを一回で済ますための条件 砕土の程度と入水時間を考慮する
稲藁や稲株、前作の残渣を埋め込みやすい、進路が分かりやすく重ねて掻かなくて済む、大量の水を必要としない、など浅水代掻きには良い点がたくさんあります。
しかし、浅水で代掻きを行うにはいくつかの条件があることに気づきました。
それは、田起こし時点での砕土の程度と、入水時間です。
今回は浅水代掻きを一回で済ますための条件について書いてみます。
【目次】
浅水代掻きと深水代掻き
浅水代掻きを一回で済ますための条件
砕土の程度、入水時間は二回目の代掻きで解決できる
浅水代掻きと深水代掻き
田植え前の最重要仕事の一つが代掻き(しろかき)。
田起こし後の土塊を更に小さく砕き、水と混和し、粘度をもたせ水漏れを防ぎ、なんなら初期除草も兼ねて行うなど、その目的に応じて内容に微妙なさじ加減を加えていくという、農家のスキルが問われる仕事です。
さて、その代掻きを行う時に水をどの程度入れて掻くか、が非常に重要になってきます。
僕はこれまで、代掻きは深水でするものだとずっと思ってきました。
深水代掻きによる失敗をした経験から、今は浅水代掻きに落ち着いています。
深水代掻きによる失敗談はこちら
浅水代掻きをすることで感じている最大の利点は、稲藁や稲株、また春に生えた草を、田植えに支障が出ない程度にまで練りこめるという点です。しかも簡単に、一度で。
深水代掻きでは、大量の稲藁が浮いてしまいます。田植え前には風で端に寄せられた稲藁を熊手でかき集め、畦にあげるという仕事が増えます。
以外に時間もかかりますし、稲藁を上げておかないと田植えに支障が出てしまいます。
浅水で行う代掻きにはメリットがたくさんあり、今後も採用していきますが、いくつか条件があることに気付きました。
浅水代掻きを一回で済ますための条件
浅水代掻きとは、目安として、土8割水2割ほどの見た目で代掻きを行います。
土8割水2割とは、パッと見ほとんど土しか見えていない状態です。
しかし、ハローで掻くと水が浮き出てくるかのように見え、稲藁・稲株、春草の残りなどもきれいに土に混ぜて埋め込めます。
ところが、浅水代掻きをする時に、大きい土塊のままだと浅水でうまく掻けません。
浅水で土8割水2割で「一回で」上手く掻ける条件は
・土塊の大きさが握りこぶしより小さめ
・入水してから二日以上経過している
の二つです。
言い換えれば、僕が今回浅水代掻きに失敗した理由とも言えます。
・土塊の大きさが握りこぶしより小さめ
自然栽培や有機無農薬栽培をされる方に多いかもしれない、土塊を大きく起こす、という田起こしのやり方。僕もその一人で、握りこぶし大の大きさになるように、ロータリーのPTOや起こす深さを調整しています。
使用トラクター(エコトラUG371)、ロータリーのPTO1、耕す深さ7センチほど、主変速3・副変速1程度で行うとだいたい握りこぶし大、それ以上の大きな土塊に起こせます。
その後、10日ほど天気の良い日が続けば、土塊はまるで石のようにカチコチになります。
カチコチの大きな土塊に水を入れ始めて一日経った程度では、まだ十分に土塊の中まで水の浸透が進んでおらず、土8割水2割の浅水代掻きでは、水と上手く混和させることが出来ませんでした。
代掻きを一度で、しかも浅水代掻きを行うには、握りこぶし大の土塊を事前にもう一度ロータリーで砕いておくことが重要です。
・入水してから二日以上経過している
入水開始後1日以内の場合、一回通るだけではうまくこなれないですが、もう一度通ればうまくこなれます。ただ、僕はなるべく一度掻くだけで済ませたいので、代掻きの時に何度も通らざるを得ないのであれば、田起こし時点である程度土塊を小さくしておいて、代掻きは一回通過で済ませるほうが良いかなと思います。
砕土の程度、入水時間は二回目の代掻きで解決できる
上記の条件は、代掻きを二回行えば特に問題にはなりません。
僕の場合は代掻きを二回に分けて行っているので、一回目は浅水というより少し深めで行うことが多いです。
握りこぶし大の大きさで代掻きを行うためには、ある程度水を入れていないと出来ないからです。
土5割水5割ほどで通常は行います。たぶん一般的な代掻きとしては、ちょうど良い水加減か少し少な目と感じる程度でしょうか。
浅水代掻きと比較するため、改めて土5割水5割程度での代掻きを行うと、その仕上がり具合の差が歴然としていることに気が付きます。
水5割ほどの見た目では、稲藁や稲株、春草の残りを埋め込むことは困難です。本当に。以前の僕は水5割ほどで掻いていて、しかもその一回で済ませていたので、代掻き後に風で畦際に寄ってきた稲藁と稲株の処理が大変でした。
一回目の代掻きを土5割水5割ほどで行うと、田んぼの見た目はまだそれほど滑らかには見えません。ところどころに稲藁が浮いていたりします。
でも、それで良いのです。
滑らかに見えるところに手を入れると、土塊がまだゴロゴロしていることが分かります。薄い土の膜が土塊の上に乗っている状態です。
その状態で20日~30日ほど水を張りっぱなしにしておくと、草がわんさか生えてきます。そこを今度は浅水で代掻きを行い、稲藁・稲株ごと生えている草を土に練りこんでいきます。
初期除草を兼ねて行っている二回目の代掻きですが、以前は一回目同様深水で行い草を浮かせ、風で畦際に寄ったところをすくいあげていました。
しかし、一回目の除草に「代掻き後5日目」くらいには入りたいため、代掻き翌日には田植えを行いたい。でも、浮いた草の処理を除去しなければならないし、案外時間がかかります。それなら不本意ではあるけど、埋め込んでしまうのはどうかと考えた結果、二回目は浅水でかくことに今は落ち着いています。
一つの技術、作業の仕方を真似る時は、田んぼごとに異なる様々な条件も合わせて似せる必要があります。
あの人がやっているから、ではうちも、というわけには実は簡単にはいかないことが多いです。
代掻き後の稲藁・稲株などの残渣の処理に困っている場合は、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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