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稲の自家採種のやり方 掃除・平置き・陰干し

自家採種とは来期の作付けの種を、自分で採ることです。

自分で採るということは、来期の作付けの出来は自分次第で決まると言っても過言ではありません。

どれだけ採種に手間と時間をかけられるかは、各個人の作付け面積や考え方によります。

僕が自家採種において、もっとも重要視していることは、多品種が混ざらないようにすること。そして、稲自身の一生を想像して、なるべくその形に近い方法をとること。

それを前提に僕が行っている稲の自家採種のやり方をご紹介します。


稲の自家採種のやり方 掃除・平置き・陰干し_b0328796_05060795.jpg

※自家採種後に陰干し



目次

稲の自家採種の前に行う掃除
稲の自家採種のやり方
稲の自家採種にかける時間


稲の自家採種の前に行う掃除


まずは、稲の穂を干す場所の掃除を行います。

掃除する箇所

・軽トラの荷台
 稲を運ぶ時に使用
・稲の穂を干す場所
 徹底的に行います。一粒の籾も落ちていないように。
・稲の穂を置くパレット。
 板の隙間に籾が引っ掛かっている場合があるため、コンプレッサーで吹き飛ばします。


スズメ対策

続いて、スズメ対策を行います。
・干場の隙間をネットで覆う
 干場の隙間をネットや詰め物をし、隙間を無くします。これも徹底的に行います。以前、ネットだけで穂を囲い、安心していたら囲いのちょっとした隙間からスズメに侵入され、食い荒らされた経験がありますから。。。



稲の自家採種のやり方


僕が行っている稲の自家採種のやり方を説明します。


・自家採種を行う田んぼを決める

自家採種を始めた五年前から毎年同じ田んぼで行っています。自然栽培歴がいちばん長く、肥料と農薬を抜き始めて7年が経過した田んぼです。


・ぐるっと周囲を回りながら生育のよさそうな株にあたりをつける

どの株を刈り取るかという判断が実はいちばん難しいです。細かく見ていけばきりがありませんし、自家採種四年目であってもいまだに迷って動きが止まることもしばしば。

生育の良さそうな株とは、
「穂の高さがそろっている」
「穂の数、つまり分げつが20本以上とれている」
「籾が100粒以上ついており、それぞれの充実度合いが高い」
「まさかり型にしなっている(倒れているとは全く別物)」
「葉が少なくとも3枚以上緑色をしている」
「止め葉が直立している」
「病気(いもち・稲麹病)にかかっている穂が株の中に無い」
「葉を極端にイナゴに食われていない」
などです。

採種し始めこそ、どの株が良いかと見ていますが、後半はほとんど直観で「かっこいい」「美しい」「立ち姿が立派」な株を選んでいます。


・草刈り鎌を片手に稲の株ごと刈り、畦に置いていく

僕が作付けしている「朝日」という稲は、脱粒が激しい稲です。バサッと動かしますと、ポロポロと穂から籾が取れて落ちてしまいます。畦に置くとき、軽トラに乗せるとき、干場へ移すとき、とにかくそっと動かすようにしています。


・来期の必要量を確保できれば、干場へ移動。軽トラに乗せた藁の量で判断します

コンバインで刈り取った後に籾だけ袋に取れば、すぐに見た目で籾の量が分かります。
一方で、株を藁ごと刈り取ってくると、藁の量でぱっと見はたくさんあるように見えますが、脱穀するとこれだけ?ということがあります。実際自家採種初年度の僕はそれで、必要量ギリギリの目にあいました。
その年の出来によりますが、籾で30キロ確保しようと思えば、軽トラの荷台に山盛り以上は必要です。


・干場に並べたパレットに平置きする

パレットという玄米袋を積み上げるための木製の台に置きます。フォークリフトで動かせるように、リフトの爪が入る隙間が設けられています。プラスチック製のものもありますが、通気性を考慮して木製のパレットを使用します。


・二週間ほど藁ごと陰干しをする

日向に干せば早く乾きそうですが、あえての陰干しを行っています。まだ藁に穂がついた状態で乾かします。
脱穀すれば干す場所は小さくて済みますが、稲が田んぼに放置されていたらどうなるかと考えたときに、まずは乾いてから脱穀かなと。
朝日という稲は脱粒が激しいため、おそらく穂が乾いた後、強風などにあおられてポロポロと株本にこぼれ落ちると想像できます。まだ十分に乾いていないうちは籾は穂についたままです。であるならば、順番は穂を乾かしてから脱穀、かなと思いそのようにしています。


・水分を計り、16%前後で乾燥は終わり

通常は15%以下になるように、穀物乾燥機を使用して乾かします。しかし、陰干しではなかなか15%以下まで下がりません。以前は出来るだけ水分を抜こうと長く置いていましたが、最近は16%前後で脱穀を行います。
当初はあまり乾いていないので発芽率の低下を気にしていましたが、特に問題なく毎年90%以上の発芽率のため、15%の水分量にはあまりこだわらなくなりました。


・足踏み脱穀機で脱穀を行う

藁を一つかみごとに脱穀していきます。時間がかかります。種籾量が30キロ程度であれば、少し足がダルい程度ですが、もっと多くなると分かりません。手動とはいえ、結構埃がします。そのため、作業時はマスクの着用が好ましいです。


・新品の米袋に種籾を入れて冷蔵庫に保存

ホームセンターでは一空きの袋(一度使用後の袋)が安く売られていますが、なるべく新品の袋に入れるようにしています。異品種が混ざる可能性の排除と共に、虫による食害も避けたいからです。冷蔵庫に入れて置けば虫の発生もありませんが、念の為です。



・余裕があれば、唐箕で風選を行う。(来期の作付け前でも可)

脱穀後の仕上げに唐箕による風選を行います。小さな藁や、空の籾が混ざっているためそれらを取り除きます。



以上のような流れで、毎年稲の種籾を採っています。



稲の自家採種にかける時間


正確に計ってはいませんが、約30キロ分の種籾を確保するための時間はそれなりにかかっています。

掃除・パレットの準備・スズメ避けのネット張りに約1時間、採種に2時間、軽トラから干場へ移すのに30分、籾が乾くまで約2週間、その後脱穀に2時間、唐箕による風選に1時間ほど。

採種に関しては作業的に一列を全て刈り取るなどすれば、もっと早く採種出来るかもしれません。
しかし、どうしても病気の株、実りがいまいちな株、分げつが少ない株などが目につきます。
せっかく自家採種を行っているので、病気にかかっていない、虫に食われていない株をなるべくなら選びたいところ。

時間はかかりますが、一株一株を見て「いいな」「来年につなぎたい」「美しい」「こんな株が増えて欲しい」など、かなり主観的に気に入った株を選ぶことにしています。


来年用の種籾を自家採種してみようと思われている方の参考になれば。




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